本プロジェクトでは、超早期の糖代謝異常の進行を抑え、正常に復する予防・治療法の開発、さらに、非侵襲的に超早期の糖代謝異常者や併発症者を検出する手法の開発を目指します。そのため、以下の101~104の研究開発項目内、および、研究開発項目間で密接に連携を取りながら研究を進めていきます。

研究開発項目101:糖尿病および併発疾患の早期検出

糖尿病やその併発疾患としての心不全・高血圧症などについて、接触あるいは非接触デバイスを用いて、採血をせずにその超早期段階の兆候を検出する手法、パレットポリジェニックリスクスコア(PRS)技術を活用しゲノムの糖尿病リスク診断を可能とする手法、造血幹細胞でのストレスメモリー診断技術、コホートデータからの血液マーカーの探索を進めそれぞれを実装につなげます。

大阪・関西万博で展示した「街中に溶け込んだ未来の健康診断を体験しよう」とミラー型サイネージ
大阪・関西万博で展示した「街中に溶け込んだ未来の健康診断を体験しよう」(左)。
ミラー型サイネージ(右)に設置されたカメラに数秒顔を映すだけで、心拍、血圧、糖尿病の状態まで検出できます。
https://note-moonshot.jst.go.jp/n/n26c6affc0839

研究開発項目102:臓器間ネットワークに基づく糖尿病・併発症の病態解明

中枢神経を含む神経系、肝・脂肪・腸・骨髄・腎・脳血管といった各臓器/組織の糖尿病発症早期段階や糖尿病併発症発症段階での変容を解析し、臓器間ネットワークを介した個体レベルでの糖尿病発症やその影響の検討を進めます。これらをもとに、発症予防につながる病的分子やメカニズムを明らかとし、動物モデルを中心としてPOCを得て、ヒトへの応用の基盤を構築します。

加齢と過栄養による視床下部MC4R発現神経細胞の一次繊毛の退縮と中年太り
年を取ると神経細胞から伸びている一次繊毛が短くなり、メラノコルチンへの感度が下がることで代謝量が低下すると同時に、摂食量が増えます。
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20240307/index.html

研究開発項目103:糖尿病および併発疾患の予防・治療の開発

臓器間ネットワークを活用し、迷走神経を刺激する手法、求心性神経に働きかける剤、脂質関連受容体、および、腸内細菌やその代謝産物といった有効な物質に帰着させることで、膵β細胞の増加による糖尿病の予防/治療、基礎代謝増加による肥満の予防/治療につながる手法を開発し、実装につながる基盤を作ります。

迷走神経の光刺激による膵β細胞の増加
遺伝子改変したマウスに近赤外光を当て膵臓を青くすると、膵臓につながる迷走神経が活発化してβ細胞の数が増加しました。白色の矢頭が指すピンク色の部分が、増加したβ細胞の核を示します。
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20231110/index.html

研究開発項目104:数理学的・情報科学的アプローチによる恒常性や病態の理解

ヒトの臓器間ネットワークを総合的に理解し、併発疾患の解析にも適用するための糖代謝・循環系を中心とした数理モデルを構築・実装し、パラメータ同定ツールと直感的な操作インターフェースを備えた未来医療数理プラットフォームのコンポーネントを構築します。また、数理学的・情報科学的アプローチを活用し、バイオの研究を融合させて、代謝・循環系の解析を横串的に進めるとともに、実験動物モデルから得られた高解像度な基礎的知見を、ヒトにおける複雑な糖尿病病態の解明および超早期予防・治療法の開発へと昇華させます。加えて、多臓器の一細胞レベルでのアトラスを完成させ、形態学的側面から病態の理解を進めます。

時間依存する血流場の数理モデルに基づくシミュレーション
時間依存する血流場の数理モデルに基づくシミュレーション。
https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1013853