研究開発項目101糖尿病および併発疾患の早期検出

課題1糖尿病や併発疾患の簡便な検出法の開発

課題推進者

藤生 克仁

藤生 克仁

東京科学大学 総合研究院 教授

心不全などの慢性的なストレスは、造血幹細胞にエピゲノム変化として「記憶」され、その後の多病化や疾患の再発の基盤となります。本課題では、この仕組みを動物モデルと1細胞レベルの遺伝子・エピゲノム解析により解明するとともに、末梢血中の造血幹細胞や単球の状態を捉える解析技術とAIを組み合わせた診断法を開発します。さらに、非接触の生体情報センシングで日常的に取得する情報と統合し、発症前に多病リスクを予測・層別化することを目指します。

代表的な論文
山田 哲也

山田 哲也

東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 教授

接触デバイスを用いて血液検査を行わずに糖尿病の超早期段階の兆候を検出する手法をAIを活用して開発しています。また、開発した技術により糖尿病を超早期段階で検出し、生活指導などの介入により糖尿病の発症を予防できる社会が実現できるように産業界と連携して研究を進めます。

代表的な論文

課題2糖尿病のゲノムリスク診断法の開発

課題推進者

田宮 元

田宮 元

東北大学 大学院医学系研究科 教授

遺伝子パスウェイや臓器間ネットワーク情報に基づく臨床サブタイプ別Palette PRSに、家族歴や疫学・臨床情報を統合することで、糖尿病の発症前・超早期における精緻なリスク評価モデルの構築と高精度化を目指します。さらに本手法を合併症発症予測へ展開し、既存データを用いた後ろ向き研究と臨床現場での前向き研究を組み合わせて検証を進めます。これにより、実用性や課題を明らかにするとともに知見を基礎研究へ還元し、病態解明とモデル改良を融合した臨床・基礎連携研究を推進します。

代表的な論文

課題3造血幹細胞を用いた多病リスク診断法の開発

課題推進者

藤生 克仁

藤生 克仁

東京科学大学 総合研究院 教授

心不全などの慢性的なストレスは、造血幹細胞にエピゲノム変化として「記憶」され、その後の多病化や疾患の再発の基盤となります。本課題では、この仕組みを動物モデルと1細胞レベルの遺伝子・エピゲノム解析により解明するとともに、末梢血中の造血幹細胞や単球の状態を捉える解析技術とAIを組み合わせた診断法を開発します。さらに、非接触の生体情報センシングで日常的に取得する情報と統合し、発症前に多病リスクを予測・層別化することを目指します。

代表的な論文

課題4ヒトデータを活用したマーカー探索と活用

課題推進者

青木 淳賢

青木 淳賢

東京大学 大学院薬学系研究科 教授

本研究開発プロジェクトは、血漿リン脂質に着目したリピドミクス解析を中核に、糖尿病や併発疾患の超早期リスクを示すバイオマーカーを探索し、さらに責任酵素やGPCRを介した分子機構、リン脂質サプリメントによる介入まで一体的に検証する国内外で類を見ない研究です。血糖値、HbA1c、インスリン抵抗性指標、生活習慣データと相関する脂質分子種同定とその機能解明を進めます。

代表的な論文
  • Iwama T, et al. Visualization of Phospholipid Synthesis on Tissue Sections Using Functional Mass Spectrometry Imaging. Anal Chem. 96(29):11771-11779, 2024.
    https://doi.org/10.1021/acs.analchem.4c01219
  • Omi J, et al. Phosphatidylserine synthesis controls oncogenic B cell receptor signaling in B cell lymph Iwama T, et al. oma. J Cell Biol. 223(2):e202212074, 2024.
    https://doi.org/10.1083/jcb.202212074
  • Iwama T, et al. Development of an On-Tissue Derivatization Method for MALDI Mass Spectrometry Imaging of Bioactive Lipids Containing Phosphate Monoester Using Phos-tag. Anal Chem. 93(8):3867-3875, 2021.
    https://doi.org/10.1021/acs.analchem.0c04479
片桐 秀樹

片桐 秀樹

東北大学 大学院医学系研究科 教授

前半5年の研究において、ヒトコホートの経時的なデータから、糖尿病の発症や余命と相関のある種々の血液マーカーの候補が得られつつあります。そこで、マルチオミックス解析などの手法を駆使して、そのマーカーおよびその最適な組み合わせを見出しvalidationを進めます。

代表的な論文
井上 飛鳥

井上 飛鳥

京都大学 大学院薬学研究科 教授

Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のシグナル計測手法を活用して、糖尿病や併発疾患のマーカー代謝物が作用する受容体を同定します。さらに、この代謝物を高感度に検出する系を構築し、患者サンプルで検証します。また、特定のGPCRシグナルを人為的に活性化する化学遺伝学的手法により、病態へのシグナルの寄与を調べます。これらを通じて、糖尿病と併発疾患の予測・予防に貢献します。

代表的な論文
土井 隆行

土井 隆行

東北大学 大学院薬学研究科 教授

病態の早期診断および予防法の開発に繋がるマーカーを探索するため、本研究では、リン脂質を可視化するためのラベル体合成を行います。

代表的な論文
  • Ban H, et al. Total Synthesis of JBIR-141 and Its Analogues: Potent Inhibitors of Forkhead Box O3 (FOXO3). Org Lett. 28(30):9591-9595, 2026.
    https://doi.org/10.1021/acs.orglett.6c02149
  • Sato H, et al. Destruxin E backbone modification effects on osteoclast Morphology: Synthesis and SAR study of N-Desmethyl and N-Methyl analogs. Bioorg Med Chem. 108:117777, 2024.
    https://doi.org/10.1016/j.bmc.2024.117777
  • Abdelwahid MAS, et al. Synthesis and Biological Evaluation of Lysophosphatidic Acid Analogues Using Conformational Restriction and Bioisosteric Replacement Strategies. ACS Omega. 8(51):49278-49288, 2023.
    https://doi.org/10.1021/acsomega.3c07668
蔵野 信

蔵野 信

東京大学 医学部附属病院 教授

臨床情報および臨床検体の解析(主としてリン脂質を中心としたリピドミクス解析)により、糖尿病の発症および合併症の進行を予測する臨床検査を開発し、未病、予防医療への貢献を行います。また、ヒト臨床研究を通じて糖尿病の分子基盤に迫り、病態解明、未病・予防法の開発へとつなげます。

代表的な論文
  • Kurano M, et al. Apolipoprotein M/sphingosine 1-phosphate protects against diabetic nephropathy. Transl Res. 258:16-34, 2023.
    https://doi.org/10.1016/j.trsl.2023.02.004
  • Morita Y, et al. Simultaneous analyses of urinary eicosanoids and related mediators identified tetranor-prostaglandin E metabolite as a novel biomarker of diabetic nephropathy. J Lipid Res. 62:100120, 2021.
    https://doi.org/10.1016/j.jlr.2021.100120
  • Kurano M, et al. Protection Against Insulin Resistance by Apolipoprotein M/Sphingosine-1-Phosphate. Diabetes. 69(5):867-881, 2020.
    https://doi.org/10.2337/db19-0811
  • Morita Y, et al. Analysis of urinary sphingolipids using liquid chromatography-tandem mass spectrometry in diabetic nephropathy. J Diabetes Investig. 11(2):441-449, 2020.
    https://doi.org/10.1111/jdi.13154

研究開発項目102臓器間ネットワークに基づく糖尿病・併発症の病態解明

課題1中枢・末梢神経による臓器間ネットワークの理解と制御

課題推進者

中村 和弘

中村 和弘

名古屋大学 大学院医学系研究科 教授

中枢神経系と末梢神経系との間の遠心性・求心性の相互連関と、それが臓器間ネットワークを調節するメカニズムを解析することにより、生体恒常性の中核を担う神経回路とその動作原理を解明します。そして、その神経回路が加齢や栄養環境によって変容し、肥満、レプチン抵抗性、糖尿病などの疾患につながる仕組みを明らかにすることで、それらの疾患を予防・治療する医薬や技術の開発に向けた基盤的知見を得ます。

代表的な論文
西村 幸男

西村 幸男

東京都医学総合研究所 プロジェクトリーダー

本研究の目標は、体を傷つけずに脊髄を刺激する「経脊椎磁気刺激」を用いて、自律神経の働きを介して血糖値などの糖代謝を調節できるかをヒトで検証することです。特に、膵臓を支配する脊髄領域を刺激し、糖代謝に関わる指標への影響を調べます。これにより、未病段階の人にも応用可能な、体への負担が少ない糖代謝制御法としての可能性を検討します。

代表的な論文
吉本 光佐

吉本 光佐

奈良女子大学 研究院生活環境科学系 教授

自律神経は脳と各臓器の間の双方向の情報伝達を介してエネルギー代謝の恒常性維持に重要な役割を果たしていますが、その動的な変化と役割については不明な点が多く残されています。本研究では動物を用い、迷走神経活動・交感神経活動・エネルギー代謝・循環動態を同時に連続測定し、従来の断片的な測定では捉えられなかった、これらパラメータ間の動的な連携の解明をめざしています。特に迷走神経活動の長期連続計測技術を開発し、脳-臓器間の双方向神経シグナルが持つ生理学的意味の解釈(翻訳)を目指します。

代表的な論文

課題2糖尿病予防・治療に向けた臓器病態の理解と制御

課題推進者

片桐 秀樹

片桐 秀樹

東北大学 大学院医学系研究科 教授

肝は食事由来の成分を門脈を介して直接受け取る臓器であることから、肝内での代謝自体が全身の糖代謝に大きな影響を及ぼすとともに、全身に向けて栄養情報を発信する機能を有しています。さらに、ブドウ糖を産生し放出することのできる臓器でもあります。そこで、肝の持つこのような特有の性質を制御することで、糖尿病やサルコペニアの予防、肥満の改善につながる方策を開発します。

代表的な論文
鈴木 一博

鈴木 一博

大阪大学 大学院医学系研究科 教授

肥満に伴う脂肪組織の慢性的な炎症が糖尿病の発症につながることが明らかになり、糖尿病の慢性炎症性疾患としての側面が注目されています。本研究では、Bリンパ球から分化して生じる形質細胞が肥満の病態において果たす役割を明らかにし、糖尿病をはじめとする肥満関連疾患の超早期診断法および予防法の開発を目指します。

代表的な論文
  • Shirai T, et al. Migration-dependent extrafollicular programming of preplasmablast age-associated B cells drives lupus pathogenesis. J Clin Invest. 136(16):e204095, 2026.
    https://doi.org/10.1172/JCI204095
  • Ise W, et al. KLF2 expression in IgG plasma cells at their induction site regulates the migration program. J Exp Med. 222(5):e20241019, 2025.
    https://doi.org/10.1084/jem.20241019
  • Shirai T, et al. Celastrol suppresses humoral immune responses and autoimmunity by targeting the COMMD3/8 complex. Sci Immunol. 8(81):eadc9324, 2023.
    https://doi.org/10.1126/sciimmunol.adc9324
長谷川 豊

長谷川 豊

岩手医科大学 医学部 准教授

糖尿病の予防・発症につながる機序を明らかにし、病態理解から全身の代謝制御と治療へ展開しています。高度肥満患者に施行した減量・代謝改善手術前後の血中メタボローム解析や揮発性有機化合物測定を行い、糖尿病・肥満の予防や発症、病態に寄与する代謝産物を同定し、その機能と役割を解明します。さらに摘出脂肪組織から、肥満・糖尿病の予防・治療に関わる蛋白質を抽出し、病態基盤の理解とデータベース構築を進めます。また、脂肪細胞の熱産生機構に着目した化合物スクリーニングにより、基礎代謝を亢進させ肥満抑制・糖尿病改善が期待できる数種のリード化合物を同定しました。作用機序の解明と最適化を進め、創薬基盤の確立を目指していきます。

代表的な論文
  • Onodera K, et al. A newly identified compound activating UCP1 inhibits obesity and its related metabolic disorders. Obesity (Silver Spring). 32(2):324-338, 2024.
    https://doi.org/10.1002/oby.23948
  • Takebe N, et al. Association of plasminogen activator inhibitor-1 and fibroblastic growth factor 21 in 3 groups of type 2 diabetes: Without overweight/obesity, free of insulin resistance, and without hepatosteatosis. Medicine (Baltimore). 102(35):e34797, 2023.
    https://doi.org/10.1097/MD.0000000000034797
  • Hasegawa Y. New perspectives on obesity-induced adipose tissue fibrosis and related clinical manifestations. Endocr J. 2022 Jul 28;69(7):739-748, 2022.
    https://doi.org/10.1507/endocrj.EJ22-0035
  • Matsushita Y, et al. Serum C-X-C motif chemokine ligand 14 levels are associated with serum C-peptide and fatty liver index in type 2 diabetes mellitus patients. J Diabetes Investig. 12(6):1042-1049, 2021.
    https://doi.org/10.1111/jdi.13438
  • Hasegawa Y, et al. Repression of Adipose Tissue Fibrosis through a PRDM16-GTF2IRD1 Complex Improves Systemic Glucose Homeostasis. Cell Metab. 27(1):180-194.e6, 2018.
    https://doi.org/10.1016/j.cmet.2017.12.005
寺谷 俊昭

寺谷 俊昭

慶應義塾大学 医学部 特任准教授

腸内細菌が産生する代謝物を起点として、腸管内分泌細胞や免疫細胞、迷走神経を介して臓器間に情報が伝達され、食行動、腸管免疫、全身代謝が制御される「腸内細菌―腸―脳」ネットワークの解明に取り組んでいます。特に、腸内細菌やその代謝物が栄養嗜好や摂食行動を形成する神経機構に加え、腸管免疫恒常性や代謝機能を制御する仕組みを明らかにし、腸脳相関をキーワードに新たな健康維持・疾患予防法の創出を目指しています。

代表的な論文

課題3骨髄ストレスメモリーのメカニズム解明と制御による多病予防

課題推進者

眞鍋 一郎

眞鍋 一郎

千葉大学 大学院医学研究院 教授

心不全のストレス等の様々なストレスが、造血系や自然免疫系に記憶を刻印し、病気の進行や、複数の病気への拡大をもたらすメカニズムを明らかにして、早期にリスクを診断し、予防・治療する方法を開発します。

代表的な論文

課題4腎・血管併発症の制御

課題推進者

久米 真司

久米 真司

滋賀医科大学 医学部 教授

絶食環境に適応するエネルギー代謝制御機構を、代謝・エピゲノム・臓器間連関の観点から統合的に解析し、特にケトン体のエネルギー基質およびシグナル分子としての役割に着目して研究を進めています。これらの適応機構の破綻が糖尿病および関連代謝疾患における合併症・併存症の発症・進展に果たす分子基盤を解明し、新たな予防・治療戦略の創出を目指しています。

代表的な論文
新妻 邦泰

新妻 邦泰

東北大学 大学院医工学研究科 教授

糖尿病を脳卒中の重要な未病段階と捉え、糖尿病患者における脳卒中発症の予防と、重症化リスクの高い糖尿病合併脳卒中に対する新たな治療法の開発を目指します。特にtRNAおよびその修飾・代謝に着目し、糖尿病から脳卒中発症・重症化に至る新たな病態機序を解明するとともに、それに基づく予防・治療法の創出に挑みます。

代表的な論文
  • Rashad S, Niizuma K. G/C-ending and synonymous codon bias define functional translational programs that shape human tissue and cancer proteomes. NAR Genom Bioinform. 8(2):lqag033, 2026.
    https://doi.org/10.1093/nargab/lqag033
  • Al-Mesitef S, et al. Context-specific Angiogenin-mediated tRNA fragments (tDRs) biogenesis shapes the mitochondrial stress response. Redox Biol. 90:104038, 2026.
    https://doi.org/10.1016/j.redox.2026.104038
  • Ando D, et al. Decoding Codon Bias: The Role of tRNA Modifications in Tissue-Specific Translation. Int J Mol Sci. 26(2):706, 2025.
    https://doi.org/10.3390/ijms26020706
  • Zhou Y, et al. Dynamic mRNA Stability Buffer Transcriptional Activation During Neuronal Differentiation and Is Regulated by SAMD4A. J Cell Physiol. 240(1):e31477, 2025.
    https://doi.org/10.1002/jcp.31477
正本 和人

正本 和人

電気通信大学 大学院情報理工学研究科 教授

糖尿病初期病態における微小血管の恒常性破綻をマルチモーダルに捉える解析基盤を構築します。特に、低酸素や炎症に伴うエンドセリン等の液性因子の変動が、下流微小血管の収縮やグリコカリックス層の剥離を誘発する初期プロセスを定量的に明らかにすることを目指します。また、AIを用いたビデオ毛細血管顕微鏡(NVC)の自動解析技術を高度化し、非侵襲的な計測データから病態を早期予見する個別化予防法の社会実装を推進します。

代表的な論文
  • Suzuki H, et al. A non-invasive approach to monitoring microcirculatory health before and after hemodialysis in renal patients using nailfold video capillaroscopy with optical reflectance analysis. Geroscience. 47(5):6473-6486, 2025.
    https://doi.org/10.1007/s11357-025-01700-y
  • Masamoto K. Optical imaging of microvascular function in the brain. IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics. 31(4), 2025.
    https://doi.org/10.1109/JSTQE.2025.3550356
  • Suzuki H, et al. Microfluctuations in Capillary Lumens Independent of Pericyte Lining Density in the Anesthetized Mouse Cortex. Microcirculation. 31(8):e12885, 2024.
    https://doi.org/10.1111/micc.12885
  • Murata J, et al. Acceleration of the Development of Microcirculation Embolism in the Brain due to Capillary Narrowing. Stroke. 54(8):2135-2144, 2023.
    https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.122.042416
  • Suzuki H, et al. Capillary responses to functional and pathological activations rely on the capillary states at rest. J Cereb Blood Flow Metab. 43(6):1010-1024, 2023.
    https://doi.org/10.1177/0271678X231156372
  • Niizawa T, et al. Spatiotemporal analysis of blood plasma and blood cell flow fluctuations of cerebral microcirculation in anesthetized rats. J Cereb Blood Flow Metab. 43(1):138-152, 2023.
    https://doi.org/10.1177/0271678X221125743

研究開発項目103糖尿病および併発疾患の予防・治療の開発

課題1迷走神経刺激による糖尿病の予防・治療法の開発

課題推進者

片桐 秀樹

片桐 秀樹

東北大学 大学院医学系研究科 教授

前半5年で、膵へ投射する迷走神経を刺激することにより、膵β細胞を増加させることができる動物実験の成果を得ました。そこで、ヒトにおいて、迷走神経刺激装置を活用した検討を行い、ヒトで膵β細胞を増加させることができるか、さらには、糖尿病を予防・治療できるか、臨床試験を進めます。

代表的な論文
新妻 邦泰

新妻 邦泰

東北大学 大学院医工学研究科 教授

迷走神経刺激により膵β細胞量が増加し、糖代謝が改善する可能性を示した前臨床研究の知見をヒトへ展開する研究です。迷走神経刺激装置をこれから植え込む患者を対象に、植込み前から血糖、インスリン分泌などの糖尿病関連パラメータを評価し、植込み後の変化を同一患者内で前向きに追跡します。これにより、迷走神経刺激がヒトの膵β細胞機能や糖代謝に及ぼす影響を明らかにします。

代表的な論文
  • Kawana Y, et al. Optogenetic stimulation of vagal nerves for enhanced glucose-stimulated insulin secretion and β cell proliferation. Nat Biomed Eng. 8(7):808-822, 2024.
    https://doi.org/10.1038/s41551-023-01113-2

課題2臓器間ネットワークの理解と制御による糖尿病予防法の開発

課題推進者

片桐 秀樹

片桐 秀樹

東北大学 大学院医学系研究科 教授

膵β細胞を増加させる臓器間神経ネットワークに関し、その分子機序など全貌の解明を進め、この臓器間ネットワークを刺激することで、膵β細胞増加により糖尿病の予防/治療につながる化合物を見出し、臨床試験に向けた基盤となる知見を得ます。

代表的な論文
山田 哲也

山田 哲也

東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 教授

個体レベルのエネルギー代謝の促進により糖尿病を予防する方策を構築することを目的としています。具体的には、「肝臓-迷走神経求心路-脳-交感神経-末梢組織・細胞(褐色脂肪組織(BAT)、ベージュ脂肪細胞、副腎など)」からなる臓器間ネットワークおよびその構成組織・細胞について、エネルギー代謝における分子メカニズムを解明し、個体においてエネルギー代謝の促進により糖尿病の予防に資する方策を提示することを目指します。

代表的な論文
木村 郁夫

木村 郁夫

京都大学 大学院生命科学研究科 教授

食・腸内環境由来の脂質代謝物を感知する細胞膜受容体に着目し、食・栄養シグナルによる生体恒常性制御機構を解明します。特に、腸管を起点とした多臓器間エネルギー代謝ネットワークの全容解明を目指し、新たな恒常性制御物質を同定することで、糖尿病等の予防に向けたサプリメント・薬剤の開発につなげます。

代表的な論文

課題3複合バイオティクスによる糖尿病・肥満の予防治療法の開発

課題推進者

木村 郁夫

木村 郁夫

京都大学 大学院生命科学研究科 教授

食事由来炭水化物の腸内細菌代謝とその宿主への作用を解明し、有用微生物および代謝物を糖尿病予防のための食品素材へ展開します。プロジェクトで見出したプロバイオティクス候補菌を用いた複合バイオティクス製剤を開発し、非臨床・臨床試験による有効性・安全性の検証を経て、機能性表示食品・サプリメントとしての社会実装を目指します。

代表的な論文

研究開発項目104数理学的・情報科学的アプローチによる恒常性や病態の理解

課題1数理モデル解析による恒常性の理解とその制御

課題推進者

水藤 寛

水藤 寛

東北大学 材料科学高等研究所 教授

我々のグループは、臓器間ネットワークの経路のひとつとして重要な役割を担う血液循環系を対象とした数理モデリング、及びそれを用いた糖尿病併発疾患の解析を担当しています。血液循環系はマルチスケールのネットワーク構造をしているため、そこでの血流動態を把握するには全体を統合的に表現する必要があり、偏微分方程式系、常微分方程式系、及びそこに含まれるパラメータ推定を通して複雑なシステムのバランスを同定するための数理モデルを構築・実装しています。

代表的な論文
  • Liu J, et al. Multiscale modeling of blood circulation with cerebral autoregulation and network pathway analysis for hemodynamic redistribution in the vascular network with anatomical variations and stenosis conditions. PLoS Comput Biol. 22(5):e1013853, 2026.
    https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1013853
長山 雅晴

長山 雅晴

北海道大学 電子科学研究所 教授

本研究開発課題では、グルコース・インスリン動態に基づく体循環ネットワークモデルと機械学習を統合し、健康から糖尿病発症に至る超早期病態の解明と予測を目指します。数理モデルの高度化により発症メカニズムを解析し、超早期段階を捉える指標を同定します。さらに、数理モデルから得られる特徴量を活用した機械学習モデルを構築し、個別OGTTデータから糖尿病発症確率の推定と超早期ステージ判定を可能にする、個別化予測システムの開発を進めます。

代表的な論文
  • 野田裕真,内海晋弥,上田祐暉, 水藤寛,片桐秀樹,長山雅晴. グルコース・インスリンダイナミクスモデルを用いた大迫コホートデータのデータ分析. 計算工学講演会論文集 Vol. 31, 2026.
  • Ueda Y, et al. A Mechanism-Based Multiscale Mathematical Model of Whole-Body Glucose, Insulin, and C-Peptide Dynamics, submitted in PLoS One.
飯田 渓太

飯田 渓太

大阪大学 蛋白質研究所 准教授

細胞の中では、多数の分子が互いに作用しながら、外部からの刺激に応じて絶えず状態を変化させています。本研究では、オミクスデータから細胞内の情報伝達を数理モデルとして再構成し、その動態を支配する法則を数学的に明らかにします。さらに、細胞の応答から臓器や個体の代謝状態を推定し、糖尿病や併発疾患の予測・制御へつなげる、数学と医学を融合した新しい研究基盤の構築を目指します。

代表的な論文

課題2情報科学的アプローチによる恒常性の理解と応用

課題推進者

高山 順

高山 順

東北大学 大学院医学系研究科 准教授

肝臓や脂肪組織などは、神経を通じて脳と情報をやり取りし、血糖値を保っています。私はこのしくみが乱れ始める兆候をとらえるため、プロジェクト内の各研究室が取得したデータ、とくに細胞一つ一つの遺伝子の働きを読み取るデータの解析を担当しています。AI技術を応用し、これまで区別できなかった神経細胞の種類を細かく分ける手法も開発しました。生命科学と数理科学をつなぎ、糖尿病を発症前に見つける基盤を作ります。

代表的な論文
長尾 昌紀

長尾 昌紀

東京大学 大学院医学系研究科 助教

糖尿病における多臓器変容メカニズムの解明や制御のために、正常または妊娠糖尿病の胎児仔マウスの発生過程アトラス作成を実施します。またAAVベクターを用いた後天的な中枢神経系インスリン抵抗性マウスを作製し、睡眠覚醒および神経・血管構造変化を解析します。

代表的な論文(これまでの本課題の成果)
小林 央

小林 央

東北大学 大学院医学系研究科 准教授

糖尿病では、発症前から全身のさまざまな臓器や細胞に変化が生じています。本研究では、ヒトやモデル動物の全身組織から得られた一細胞レベルの遺伝子情報をAI基盤モデルで解析・統合し、全身システムの連携がどのように崩れて糖尿病へ向かうのかを高次元空間上に描き出します。さらに、コホート研究の多様な生体データと組み合わせ、糖尿病の「未病」を捉え、発症リスクの予測や予防・早期介入につながる新たな標的の発見を目指します。

代表的な論文
  • Kobayashi H, et al. Geneformer-guided multiomics integration identifies Pbx1 as a network hub of hematopoietic stem cell aging. Sci Adv. 12(34):eaeb1346, 2026.
    https://doi.org/10.1126/sciadv.aeb1346
  • Watanuki S, et al. SDHAF1 confers metabolic resilience to aging hematopoietic stem cells by promoting mitochondrial ATP production. Cell Stem Cell. 31(8):1145–1161.e15, 2024.
    https://doi.org/10.1016/j.stem.2024.04.023
  • Watanuki S, et al. Context-dependent modification of PFKFB3 in hematopoietic stem cells promotes anaerobic glycolysis and ensures stress hematopoiesis. eLife. 12:RP87674, 2024.
    https://doi.org/10.7554/eLife.87674